魔王の葛藤
「魔王」-私はそう呼ばれる存在です。
この世界を征服し、魔族の世とすること。
それが魔王に代々与えられてきた使命です。
ですが・・・私の世界征服に対する考え方は、
恐らくこれまでの魔王とは違うのでしょう。
私は人間を滅ぼすことは考えていません。
彼らの命を奪う事に意味を見出せないからです。
私はただ、我ら魔族と共存するという事を、
人間たちに理解してもらえれば、それで良いと考えています。
これならば、この世界は人間の世でありながら、魔族の世ともなる。
それで「この世界を魔族の世にする」という使命を果たすつもりです。
ただ、いずれにしてもどうにかしなければならない問題はございます。
勇者-歴代の魔王が降臨するのと同時に現れ、魔王を打ち倒してきた存在。
そして勇者は此度、単身で私の下へ訪れました。
しかし、今回私は勇者を倒してしまったのです。
こんなことは過去に一度もありませんでした。私も戸惑っているところです。
現在は彼の戦力を奪い、捕虜として迎えている状態です。
戦力を奪ったとはいえ、勇者が今後再び私の脅威にならないとも限りません。
ただ、無用に彼の命を奪う事もしたくはありません。
先ほども申し上げたように、無闇に人間の命を奪う事に意味を見いだせないからです。
勇者が私の考える世界征服を理解し、共に実行してくれれば良いのですが。
ならば私の取るべき道は、勇者を説得することでしょう。
とはいえ、魔王たる私がかような世界征服のありかたを説いたとて、
勇者がすんなり納得してくれるとも思えません。
皆様、どうか勇者の説得にご協力をお願い致します。
過去の実際のやりとりです。質問されたら参考に答えてください。
勇者は強かったですか?
魔王「ええ・・・ですが、不思議なことに勝ってしまいましたね。」
勇者は単身、乗り込んできたのですか?
魔王「ええ、独りでしたね。」
他の魔族や家来は、人間との共存について異議を唱えていたりしますか
魔王「多少は。ですが、ほとんどの皆は賛同してくれています。」
勇者を説得するならば、世界征服という言葉は使わないほうがいいと思います。何か別の言葉を探しましょう!
魔王「そうですか・・・どんな言葉がよいのでしょう?」
今勇者と直接話すことはできますか?
魔王「ええ、できますよ。」
魔族と人は外見から一目瞭然で区別できますか?
魔王「種族にもよりますね。私は人間とほとんど同じ容姿で、ただ角が生えているぐらいですかね。でも、半人半獣の姿をした者などもおりますわ。」
勇者さん 魔王を倒したくて来たんですか?
勇者「・・・そうだ。」
勇者さん あなたから見た魔王のようすを教えてください
魔王「黄金の装身具に身を包んでいます。持っていた勇者の剣は、今は奪って別の場所に保管してあります。」
昔の勇者たちは某ゲームのようにパーティーを組んでいましたか?
魔王「歴代の魔王を倒した勇者たちは、そうだったと聞いています。」
勇者さん どうして魔王を倒したいんですか?
勇者「・・・・・・(勇者は押し黙っている)」 魔王「・・・?」
勇者さん、あなたは魔族に恨みがあるのですか
勇者「・・・さぁな」
普通の人間は魔族のことを嫌っていますか?
魔王「ええ・・・残念ながら。歴代の魔王たちは、邪悪なものとして君臨していましたから。ですが、これからは魔族のあり方を変えていきたいと考えておりますわ。」
10より。勇者さん。あなたは何故、他の歴代勇者たちのようにパーティを組まず、単身で乗り込んで来たんですか?
勇者「・・・・・・(勇者は顔をしかめながら黙っている)」 魔王「・・・?」
魔王様は女性ですか?
魔王「ええ。・・・女が魔王であることは珍しいことのようです。」
勇者さん、まさか…報酬目当てとか…ですか?
勇者「・・・そんなモン、もらえるはずがねえ」
魔王さん 過去に一度もなかったというのは いつも勇者が魔王に勝っていたんですか?
魔王「ええ、そうです。」
歴代の魔王を倒してきた勇者はその魔王ごとに違いましたか?
魔王「ええ。魔王と勇者の戦いは、おおよそ100年に一度行われてきています。」
勇者さん 魔王様が女性で手加減をした…とかは違いますよね?
勇者「俺は本気で戦った。」
勇者さん 確認ですけどあなた人間ですか?
勇者「ああ。」 魔王「私にも人間に見えます。」
勇者さんは魔族と人間の共存はどう思っていますか?
勇者「・・・何だと?どういうことだ魔王!?」
魔王さん。現在その世界の魔族と人間の争いは、どちらの方が優勢なのですか?
魔王「私は人間と争うつもりはありません。今現在も、人間と魔族との間に争いは起きておりません。」
勇者さん あなたの普段の生活についてー家族とか仕事とかーを一通り教えてくれますか?
勇者「・・・・・・(勇者は虚ろな表情を浮かべて黙っている)」 魔王「・・・?」
15 勇者さん、指示されたのではなく、自らの意思で突入したと捉えて良いですか
勇者「・・・ああ」
勇者さん、あなたは自ら望んで勇者になりましたか?
勇者「・・・初めは、嬉しかったさ・・・だが・・・」
勇者さんは、魔王さんとはこれが初対面ですか?
勇者「・・・ああ」
勇者さん あなたは元々この世界の人間ですか?
勇者「・・・そうだ」
失礼を承知で聞きますが、勇者さんのご両親はご健在ですか?
勇者「両親は、早くに亡くしてる」
勇者さん、もしかしてお仲間は亡くなってしまったのですか?
勇者「・・・まぁ、そうだ、な。」
勇者さん、冒険の中で、親しい人を亡くしたりしたのですか?
勇者「・・・親しい・・・あぁ・・・親しかった・・・そう思っていたのに・・・!」
勇者さん、あなたが勇者に選ばれた理由は自分でおわかりですか?
勇者「・・・俺にはその資格があったんだとさ。生まれつきな。」
28より 勇者さん、亡くなられたお仲間とはどういった関係でしたか?普通に魔王討伐のため組んでいただけ?友人や恋人だったり?
勇者「・・・魔法使いと、戦士。魔法使いは俺の恋人で、戦士は幼馴染だ。」
20より。勇者さん。ここにいる魔王さんは、人間と魔族の共存を考えており、人間に害をなすつもりはまったくないそうです。現にあなたの命を奪ったりもしませんでしたし……魔王さんを倒そうとするのはやめてくれませんか?
勇者「・・・ふざけるなよ、魔王・・・!」 魔王「・・・一体、何を怒っているのです?」
勇者さん……まさか、仲間に裏切られた?
勇者「・・・戦士が、魔法使いを殺した・・・そして・・・俺は戦士を殺した・・・!」
28.29より。勇者さんは旅の中で、親しい人に裏切られるような出来事があって、その人を手にかけてしまったのでしょうか?
勇者「・・・戦士が、魔法使いを殺した・・・そして・・・俺は戦士を殺した・・・!」
32 勇者さん、どうして怒っているのですか?とりあえず落ち着いてください…
勇者「・・・殺せ!俺を殺せよ!俺がお前を殺せないから、お前が俺を殺せ!!!」
勇者さん……失礼ながら、お仲間と三角関係だったんですか?
勇者「・・・戦士が・・・俺と魔法使いの仲を妬んだんだ・・・そして、戦士は魔法使いが自分の物にならないと知って・・・それだけじゃねえ・・・」
勇者さんどうして戦士が魔法使いを殺したかを教えてもらえませんか?
勇者「・・・戦士が・・・俺と魔法使いの仲を妬んだんだ・・・そして、戦士は魔法使いが自分の物にならないと知って・・・それだけじゃねえ・・・」
33.34より。戦士がなぜ魔法使いを殺したのか、動機に心当たりはありますか?
勇者「・・・戦士が・・・俺と魔法使いの仲を妬んだんだ・・・そして、戦士は魔法使いが自分の物にならないと知って・・・それだけじゃねえ・・・」
魔王さん、あなたの魔力で、勇者さんの仲間を生き返らせるのは可能ですか…?
魔王「・・・そんな力はありませんわ。私にも・・・彼にも。」
勇者さん、お二人がなくなったのはどのぐらい前の話なんですか?
勇者「・・・半月ほど前になるかな。」
37.38より。それだけじゃない?他にも何かあったのですか?
勇者「・・・あいつ・・・!魔法使いを殺した罪を俺に着せやがった!!!」
35より。勇者さんはまさか仲間の一件で自暴自棄になって死にたくなり、魔王さんに殺してもらうつもりでここまでやってきたのでしょうか?
勇者「・・・言っただろう。魔王を殺せるなら殺すつもりだったさ。」
ちなみに魔王さん、今のところ勇者さんのお話を聞いてどう思います?魔族の間にも結構同じようなことってありますか?
魔王「・・・どうなのでしょう?ただ、今の勇者の境遇は・・・非常に、気の毒に思います。」
今勇者さんはどうしたいですか?
勇者「・・・もういい。どうせお前らは理解しない。もとより誰かに理解してもらうつもりもない。」 魔王「・・・自棄になっているようですね・・・」
勇者様、あなたは魔王様を全力で、殺そうと思って戦いましたか?
勇者「・・・ああ」
41より 勇者さん、つまり現在人間たちの間ではあなたは「魔法使いと戦士を殺害した仲間殺しの大悪党」だと誤解されているのですか?
勇者「・・・ああ、そうだよ!」
41より。じゃあ今、勇者さんは指名手配とかされて、人間たちから追われてる立場なのですか!?
勇者「・・・ああ、そうだよ!」
勇者さん、とりあえず落ち着いてください、お水をどうぞ
勇者「五月蠅い!」ガシャーン(勇者は差し出された水を突っぱねた)
41より、勇者さんは今追われる身ですか?
勇者「・・・ああ、そうだよ!」
ほらほら勇者さん自棄になってはいけません。人に裏切られたり失恋したりした辛さには、新しい恋が一番ですよ?眼前の魔王さんなんかお相手にいかがです?
勇者「黙れ!俺は独りだ・・・!仲間に裏切られ、俺を英雄とはやしたてた愚民どもは手のひらを返すように俺を『魔王』と呼んで蔑んだ!・・・俺は・・・独りなんだ・・・」
勇者さんは自ら志願して勇者になったのですか?それとも誰かに押し付けられる様な形で?
勇者「・・・俺には生まれつき、その資格があったんだとさ。まぁ、半分は押しつけみたいなもんだ。」
魔王様、勇者以外の人間とコンタクトをとったことはございますか?
魔王「いいえ・・・まだ、人間とは特に接触はしていません。」
魔王を倒して、勇者としえの名声を取り戻したかったのですか
勇者「・・・そんなモンどうだっていい。」
もし魔王を倒せていたら、罪もチャラになって受け入れてもらえるかも…とか、思いました?
勇者「・・・今さら奴らに受け入れてもらうつもりなんぞ無い。」
勇者さんは今人間不信で自棄っぱちになってる上に、人間たちから追われてるんですよね?なら、しばらく頭を冷やす&身を隠す代わりに、魔王さんの元で働きながら、魔王さんの「人間との共存」の意思が本当かどうか観察してみては?
勇者「・・・何が共存だ!ふざけるなよ!」
核心魔王を倒して自分が魔王となり、人間に復讐しようと考えましたか?
勇者「・・・そうだ。俺が魔王となって・・・あのクズ共を滅ぼす・・・そのつもりだった!」(後で正解にさせていただきます)
核心新しく魔王に成り代わり、人間大虐殺を目論んでいたのですか
勇者「・・・そうだ。俺が魔王となって・・・あのクズ共を滅ぼす・・・そのつもりだった!」(後で正解にさせていただきます)
核心勇者様、一度は「勇ましい者」と呼ばれたあなたが、自暴自棄とは情けないことです。その上心を閉ざしてしまったら、あなたに一体何が残ると言うんです? 掛け違えたボタンをはめ直すのは今からでも遅くはございません。幸い、魔王様は、あなたと意思の疎通を図る努力をなさっているようですよ?
魔王「・・・そう、貴方は、独りじゃない。」魔王は優しく、勇者を包み込むように抱擁した。勇者「・・・!?」(解説へ参ります)
勇者さん、「もう、いっそのこと魔王(魔族)側にいた方が気が楽だ」とか少しでも思っていますか?
勇者「魔王を殺せない俺に残された希望は・・・俺が死に、魔王がこの世界を蹂躙すること・・・それだけだったのに!」
勇者さんの話を聞いて魔王さんの考えに変わりはありませんか?
魔王の抱擁を受けて、勇者は感涙にむせんでいる「・・・うぅううううぅぅぅう!わあああああああああぁぁぁぁああああああああああ!」
魔王さん、勇者さんは人間を憎んでいて滅ぼしたいとすら思っているようです。ここは「人間を支配下に置く」というのをアピールして協力させるのはどうでしょう?
魔王「・・・それを、私は望みません。私の望みはあくまで『共存』ですから。」
話を蒸し返すようで悪いですが・・・。あなたは魔法使いを愛していました。あなたは人を思いやることができるはずです。戦士を殺したのも魔法使いをそれだけ愛していたということです。今一度よく考えてみてください。今後、人間と共存する未来が見えませんか?
魔王の抱擁を受けて、勇者は感涙にむせんでいる「・・・うぅううううぅぅぅう!わあああああああああぁぁぁぁああああああああああ!」
答え
魔王は人類の蹂躙を望み、勇者は魔王の邪なる野望を打ち砕く。
そういった対極の存在として、魔王と勇者の伝説は語り継がれてきた。
しかし此度の魔王と勇者は、
対極の存在でありながら、これまでとは全く違う関係を築いていた。
魔王は人類との共存を願い。
勇者は人類に絶望し、滅ぼす事を願った。
魔王がそう願う理由は、彼女自身が語った通り。
勇者がそう願った理由を語るには、少しばかりの時間が要る。
興味があるならば、語ろう。興味がないのなら、読み飛ばせばよい。
彼の歩んだ凄惨たる運命を。
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魔王討伐の任を仰せつかることは、大変に光栄なこと。
だから勇者が勇者に選ばれた時、誰もが彼を、この世の救世主だともてはやした。
勇者には初め、打倒魔王の旅を共にした者がいた。
戦士と魔法使い。
戦士は勇者の幼馴染で、魔法使いは勇者にとってかけがえのない恋人であった。
彼らは昔から仲が良く、勇者が勇者として選ばれた時も、三人で魔王を倒そうと誓い合った。
だが、悲劇は唐突にして訪れた。
とある街を訪れた時の事。
夜、勇者たち一行の宿泊していた宿が焼き討ちされ、魔法使いが命を落とした。
当初は街まで侵攻してきた魔族によるものであると考えられていたが、
街に魔族が侵入してきた形跡はなく、人間の仕業であることが判った。
そして、騎士団による調査の結果では、それを実行したのが勇者であるとされた。
しかも、初めから魔法使いを殺すつもりで計画された事である、と。
もちろん身に覚えはなく、そもそも魔法使いを殺す理由などないと勇者は反論するが、
数々の証拠の品により勇者による犯行であると断定され、
また魔法使いを殺した理由も適当にでっち上げられてしまった。
こうして、かつて彼を英雄ともてはやした人々は、掌を返すように彼を罵った。
その日から彼は、救済対象である人類から追われる身となった。
邪なるもの-「魔王」として。
どうしてこうなってしまったのだろう。
勇者は苦悩した。
最愛の人を失った事。
追われる身となった事。
このままでは終われない。とにかく真実を知りたい。
その一心で、勇者は追われながらも、件の事件について独自に調べていった。
そして、彼は真実に至る。
彼の至った真実は、とても残酷な物だった。
勇者は一人の人物と対峙する。
それは、全ての信実を握る人物-戦士だった。
全ては戦士による犯行だったのである。
幼いころから、彼と勇者は互いに切磋琢磨していた。
しかし、戦士がどれほど努力を重ねようとも、勇者はその上を行った。
剣術も、学術も・・・そして、魔法使いとの恋の行方も。
戦士もまた、魔法使いに恋心を抱いていた。
しかし、魔法使いの心はいつだって勇者に傾いていた。
旅の最中、あの街の宿の焼き討ちが起こる直前の事。
戦士は魔法使いに気持ちを伝えた。
これまで自分がどれだけ魔法使いを想ってきたか、その全てを伝えた。
それでも、魔法使いが選んだのは勇者だった。
その時、戦士の心に歪みが生じた。
積もり積もった妬み。
それは次第に、全てを勇者に奪われてきたという憎悪へと姿を変えた。
憎悪の対象は勇者だけに留まらなかった。
どれだけ想っても振り向いてくれない魔法使いにも、それは及んだ。
だから戦士は、勇者から全てを奪ってやると決意させた。
勇者たる栄誉を奪い、魔王の汚名を与え、
愛する人をも奪ってやる。
そして戦士は凶行に及んだ。
全ての真実を知った勇者もまた、戦士を激しく憎んだ。
二人の憎悪は激しく衝突し、二人を互いを殺し合った。
激戦の果て、生き残ったのは勇者だった。
だが、勇者は勝利の喜びに浸ることはなかった。
あるのはただ、何もかもを失った喪失感だけ。
暗く淀んだ空をぼんやりと眺めているうち、
次第に勇者の心は絶望に支配されていった。
それは、今の自分に対する絶望でもあり、
救済すべき対象であるはずの人類に対する絶望でもあった。
これまで自分が信じてきた全ての人間に裏切られた。
幼馴染であった戦士に、最愛の人を奪われた。
そして、かつて自分を英雄ともてはやした者達も、今は自分を魔王と蔑む始末。
もう、この世界で、自分に味方する者は誰もいない。
圧倒的な孤独に苛まれるうちに、勇者は人類に対する憎しみを憶えた。
人間はロクでもない生き物だ。
妬み、憎み、平気で他者を殺し、他者を陥れる。
力を持たぬ者達は、力を持つ者にすがり、しかし平気で斬り捨てる。
ああ、なんてロクでもない生き物なんだ。
ならば滅ぼしてしまえ
生きる価値の無い人間どもを根絶やしにするために
魔王に代わって俺がこの世を蹂躙してやろう
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絶望だけを抱えて魔王の下に訪れた勇者。
しかし勇者は魔王に敗れた。
考えてみれば、それは当然の事であった。
勇者とは人類の希望を力に変えて、魔王を打ち破る者。
希望を失った勇者がそれだけの力を持てるはずもなかった。
それならそれでいい。
自分を殺せば、魔王が世界を蹂躙するのを阻むものはいなくなる。
魔王に敗れた勇者は、このまま魔王に殺される事を望んだ。
しかし、魔王は勇者を殺す事を望まなかった。
ただ、勇者を優しく包み込むように抱擁し、彼に語りかけた。
-ごめんなさい。
-私がいなければ、貴方が勇者になることは無かった。
-貴方の絶望には、私にも罪があります。
-でも、起こったことは覆らない。
-私にも、貴方にも、それを覆すだけの力は無い。
-確かに、人類の全てが貴方の敵になってしまったかもしれません。
-でも、貴方は孤独じゃない。
-人ならざる私は、貴方を受け容れましょう。
-私の世界征服の構想を少し、修正しましょうか。
-私は魔族の存在を、人類に認めてもらうことを考えてきました。
-それに、貴方という存在をもう一度認めてもらう事を加えましょう。
-大丈夫。
-貴方は一人じゃないから。私もいますから。
-二人で協力して、この世界を征服しましょう?
全ての者に拒絶され、閉ざされた勇者の心は、
自らを受け容れてくれた魔王によって再び開かれ、
堰を切るようにして感涙にむせぶ。
彼の人への憎悪の全てを取り払うことはすぐには難しいだろうが、
いずれは彼の憎悪も融け、全ての人々を許し、また許される日が来るのだろうか。
ただ、勇者の心に再び希望の光が灯ったことに、間違いはないだろう。
参加者に解説を表示中。各自が封を開けます。
💬 参加者チャット
まだ発言はありません。
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