亀夫君問題

捕らわれの騎士の望み

作者: 低空飛行便

俺はギルベルト・ボーデンシャッツ。

もし時間があれば、俺の話を聞いて欲しい。


ハール国とカナン国が戦争をした。
そして俺はハール国の騎士として戦った。

しかし戦争はカナン国の勝利に終わった。
俺は捕らえられ、カナン国の牢屋の中にいる。

俺は、祖国ハールに帰りたい。


もし時間があれば、知恵を貸してくれないだろうか?
俺がこの牢屋から脱出する方法を。

出題者が、解き手の進み具合に応じて上から順に出すためのヒントです。

ヒントはまだありません。

過去の実際のやりとりです。質問されたら参考に答えてください。

牢屋の中には何があるの?

寝床用の粗末な敷物、排泄用の容器ぐらいだ。何もないと言っても差し支えないぐらいだな。

扉とか窓とかトイレとか、外部に繋がってるのはある?

目の前には分厚い扉。天井には鉄格子つきの窓がある。天井が高くて窓には手が届かないな。ちなみに牢屋そのものは石づくりだ。

牢屋の外を見ることは出来ますか?

天井の鉄格子つき窓から空の様子を見ることができるぐらいだ。扉から外の様子はうかがえない。

なんで祖国に帰りたいの?

郷愁の念、というやつかな。君は祖国から長く離れていたことはあるかい?あるならその気持ちが分かると思う。

今の格好を教えて下さい

囚人にふさわしい、粗末な服だ。

その牢屋のある場所の住所は分かりますか?

詳しい住所は分からない。分かるのはここが敵国のカナンであることぐらいだ。

今いる牢屋には、他に誰かいますか?

俺一人だ。ここは独房だよ。

確認ですが、牢屋から出るだけでOKですか?それともハールまで連れていくまでですか?

まずは牢屋から出ることを考えたい。知恵を貸してはくれないか?

とりあえず、あなたの性別と年齢、あとは体重・身長・その他の身体的特徴を教えて頂けますか?

男性で22歳、騎士としては標準的な体格をしている。その他の身体的特徴は…………。

あなた以外に捕らわれた騎士はいますか?

分からない。少なくともこの牢屋には俺一人だけだが。

ハール国とカナン国はどれくらい離れているの?

国境で隣り合ってはいる。しかし王都同士はかなり離れていると言っていいだろう。

あなたを捕らえた人は、カナン国の兵ですか?

そうだ。俺は戦争に負けた騎士だからな。

ところで、何か持っている?

何も持っていないんだ。戦争に負けた後、何もかも取り上げられてしまった。ああ、服は着ているよ。

こんにちは、とかげです。ハール国、カナン国はなんで戦争しちゃったんですか?

戦争の理由は話せば長くなる。本質を話せば、生きるために相手から奪う。戦争とはそういうものだと俺は思っている。

あなたは今健康な状態ですか?それとも怪我や病気をしていますか?

怪我や病気はない。今でも鍛錬は欠かしていない。

俺の話を聞けという事は、貸した金の事はどうでも良いですか?

君から借りた金?すまないが覚えがない。初対面ではないだろうか。

もう一度戦争してハールが勝てば、あなたはハールに帰れるのではないですか?

ハールが勝つことは叶わない。なぜならハールはあの戦争で既に滅びている……。

ところで私たちは誰でしたっけ?

(天の声:メタな質問には答えにくいです。ごめんなさい)

あなたの国の騎士は4人ですか?

いや、カナン国の人口も騎士の人数ももっと多いぞ。ただ祖国ハールは、既に滅びているからな……。

鍵があれば牢屋から出られますか?

内側から扉の鍵を外すことは決して出来ない構造になっている。

あなたは生きて再び祖国の土を踏みたいのですか?

生きて祖国の土を踏みたい。多少の怪我はいとわないが、五体満足で帰りたいところだな。

あなたの戦争中の活躍を教えてくれませんか?

騎士隊長をしていた。これでも『不死身の騎士』の二つ名で敵からは恐れられ、味方からは頼りにされたものだよ。

ギルベルトさんが捕まってから、どれくらい経つのですか?

実はもう、百年くらい経っているんだ。

その寝床用の敷物めくってもなにも無い?

何もないな。石畳の床が見えるだけだ。

天井の窓にはガラスがついていますか?

天井の窓には鉄格子がついている。硝子はないな。

食事はどうしているのですか?

扉の下部にごく細い隙間があって、そこから文字通り食事が差し入れられる。

カナン国ハール国、海の近くとか山の近くとか、それぞれどういう場所にある国なのかを教えていただけませんか?

大まかに言うと、カナンは平地が多く、ハールは山地が多い。どちらも海に面している。

ハール国とカナン国の文明レベルはどの程度ですか?

高い文明を有していると思う。国王と貴族たちによる政治、農業や商業、道もあるよ。(天の声補足:今回のお話の舞台は大まかに中世ヨーロッパ的なものと思ってください)

あなたは魔法が使えたりします?

この世に魔法はないとされているし、俺自身もちろん、魔法は使えない。ただ……。

今の天気はどうですか?

今は晴れているな。太陽の光が天井の窓から差し込んでくる。

看守はいる?

いるよ。扉を挟んだ外側で見張りをしている。

9より あなたは人間ですか?

人間であることは間違いない。

祖国ハールはもうないんだ。君は現実を見つめなおさなくちゃいけないんだ。それとも何かい?君の望みは「ハール領だった場所に行きたい」という事ですか?

「滅びた祖国に行きたい」というのもおかしく聞こえるかもしれないが、そういうことになる。長い間、敵国内で、たった一人でいたものだから。

17 ハールが滅んだ、ということは、ハールはカナンに吸収合併されてしまったのでしょうか?

ハールが今どういう状況なのか、カナンに併合されてしまったのか、それは分からない。この牢屋に長くいて、情報が耳に入ってこないんだ。

ギルベルトさんは、何か特殊な能力をお持ちですか?

特殊能力は、あるな。(天の声:40参照)

18より あなたと我々はどうやって会話をしていますか?

何かの奇跡が起きているのかもしれないな。俺ごときではうかがい知れないくらいの。(天の声:メタな質問には答えにくいです。ごめんなさい)

17より ハールが滅んでしまったならば、あなたは具体的にはどこに帰りたいと考えているのですか?

ある。実は、俺の身体は不老不死だ。比喩でも何でもなく。

まさか、「祖国ハール」という名前の人の所に帰りたいのですか?

いや、場所だ。誤解させることを言ってしまった。すまない。

あなた何か魔法かけられてるんじゃない?

不老不死となる魔法をかけられた。これは解けることのない魔法らしい。

22 29 まさかあなた、本当に不死身ですか?

そうだ。本当に不老不死なんだ。

22歳なのに、捕まってから100年も経っているのですか…?

その通りだ。不老不死だから、肉体は22歳のまま、100年も経っている。

あなたはもしかして本当に不死身なのですか?だとしたらバラバラになって、窓やドアの隙間から出られるのでは?

不老不死であることは間違いない。しかし身体を細かくバラバラにする方法は無理なんだ。なぜなら、この牢屋の中には刃物がない。

扉の下にある隙間を完全に塞ぐことはできますか?

難しいな。敷物で試そうとしたが、無理だった。

23 ところで、牢屋に入れられているのに、時間経過が分かるのはどうしてですか?

天井を見れば、空の様子が分かる。空を見れば一日の経過が分かる。そうすれば大まかな年月の経過は分かるよ。正確な年月は難しいが。

ハール領が今どうなっているか分かりますか?

ずっとこの牢屋にいて、詳しいことは分からない。

カナン国もまだ健在ですか?

カナン国は健在だろう。この牢屋が変わらず見張られていることからそれは分かる。

もしかしてカナン国も滅んでますか?

いや、それはないだろう。

鉄格子はどんな様子ですか?ぼろぼろになっていたらそこから脱出できるかもしれませんよ。

鉄格子は、錆びているな。確かに届きさえすれば脱出は出来そうだ。

39 誰に魔法をかけられたか分かりますか?

戦争の直前、ハール国の学者が不老不死の秘術を古い巻物から見つけ出した。それに従って魔法をかけた。長い時が過ぎているから、彼はもう生きていないだろう。

ギルベルトさんに食事を持ってくる人がどんな人か、わかりますか?

看守が差し入れてくれる。

不老不死は怪我したらどうなるんですか?

そこは普通の人間と同じだ。痛みを感じるし、血も流れる。ただし、死なない。

2より 牢屋は石造りだということですが、石を崩すことはできないのですか?

石を崩す……。なるほど、それができれば脱出につながるかもしれないな。しかし見たところ頑丈そうで崩せそうなところはないが……。

空には何か浮かんでますか?飛空艇とか鳥とか

天井の窓から鳥を見ることはある。飛空挺、というのは、すまない、良く知らないのだが。

天井はどれぐらいの高さですか?

だいたい俺の身長の3つ分くらいかな。跳び上がったくらいでは天井まで手は届かないな。

100年もの間、誰かと会話する機会はなかったのですか?

ほぼないと言っていい。看守と話をすることもないんだ。無理もない。俺はカナン国の人間にとっては敵だ。

今日は晴れているとのことですが、晴れているときと、雨や雪のときとでは、牢屋内の様子は何か変わりますか?

雨が降れば、天井から雨が吹き込んでくるよ。

あなたは死にたいですか?

いいや、生きたい。死にたいとは思わない。

脱出までにいくら時間がかかってもよいのでしたら、何百年も待てば、そのうち牢屋の建物が風化して崩れ、外に出られるのでは?

もちろん、待つことは出来るだろう。しかしどうせ待つなら、その間に出来ることはしておきたい。結果的に牢屋の建物が風化する結果になったとしても。

あなたは食べ物を全く食べなくても死む事はないのですか?

死ぬことはない。ただし、体力を失い、動けなくはなるだろう。

48より あなたは自力で腕がもげますか?

いや、さすがにそれは無理だ。

不老不死なのに食事が来るって事は、あなたを閉じ込めている人はあなたが不死身だと知らないんですか?

カナンの連中は俺が不老不死であることは知っている。本来なら戦争に負けた側の騎士は処刑される。しかし俺の身体は不老不死で処刑出来ない。仕方がないので閉じ込めている。そんな具合だ。

牢屋の中にも雨は入ってきますか?

天井から吹き込んでくるよ。(56参照)

100年も経っているのに、どうしてカナンはあなたを捕えたままなんでしょう。看守さんに理由を聞いてみられますか?

不老不死の俺を処刑出来ないからだ。処刑出来ないからといって野放しにするわけにもいかない。それで仕方なく閉じ込めている。それと、看守と話をするのは無理だろう。相手をしてくれない。

排泄用の容器にどれくらい水は入りますか?

少し直接的な言い方をするが、便2、3回分ぐらいかな。

なんとかしてドアの隙間を塞ぎ牢屋内を水で満たすことができれば、あなたは水で窓まで浮かびあがり、窓から脱出することができそうですか?

ドアの隙間をふさいだとしても、おそらくは石畳と石畳の間から水が染み出してしまうのではないかな。

大声を出したり暴れたりしたら、看守から処罰を受けますか?

注意はされる。ただし、処罰を受けることはない。なぜなら不老不死の俺を恐れて、看守が牢屋の中に入ってくることはないからだ。

排泄用の容器がいっぱいになったら、看守に捨ててもらうのですか?

それが笑えることに、容器を扉の隙間から差し出せないという理由で、俺自身が牢屋の中に捨てるんだ。(66より)扉が開くことはないからね。これでは意味がないと言えばないな。

看守はさすがに100年も生きられないでしょうから、今の看守は戦争をよく知らない世代ですかね?

そういうことになるな。看守も代替わりでこの牢屋を見張っている。

牢屋の壁は、上下左右、天井や地面も含めて全部が石造りなのですか?

壁はそうなる。ただ牢屋の土台部分は、土だろうな。

石造りということは石を登って鉄格子のところまでいけませんか?

やってみよう。……だめだ、思ったより手掛かりがなくて登れない。

食事の時に使うナイフやフォークは金属でできていますか?

食事は基本的に手づかみだ。囚人にナイフやフォークは提供されないし、俺自身が警戒されているというのもあるだろう。

雨水はどのくらいまで溜まりますか?ドアの下の隙間ぐらいまで?

牢屋に雨水がたまることはないな。つまり、床に染み込んでしまうことになるが……。

食事の時に、食器やフォークやナイフなども牢屋の中に渡されますか?

食事は基本的に手づかみだ。囚人にナイフやフォークは提供されないし、俺自身が警戒されているというのもあるだろう。

床に隙間があるか、水の流れで調べられませんか?

なるほど。水の流れをたどってみよう。……この床の石畳の隙間から水が?この石畳、めくれるぞ!むき出しの土が見える!

雨の勢いはどのくらいですか?

強くもなく、弱くもなくといった具合だ。

地面の土、少し掘れませんか?

(74より)むき出しの土は『少し』なら掘れそうだ。ただ人が通れるぐらいに彫るのは無理だな。

雨が降ったら、地盤が緩んで床の石が取れやすくなったりしないでしょうか?

(74より)やってみたよ。一枚だけだが、石畳をめくることができた!

他の人間はあなたを恐れて牢屋内まで入ってこないということは、穴を掘ってもばれません。不老不死でいくら時間がかかってもいいのですから、雨で柔らかくなったタイミングを見計らって、地面を掘って脱出するというのは?

穴掘り、やってはみよう。……これは、脱出口が出来上がるか、俺の心が折れるか、どちらが早いかの勝負だな。すまないが俺の心のほうが劣勢だ。

食器の容器や排泄用の容器を使い、水を貯め、土を濡らして柔らかくしながら掘り進むことはできそうですかね?

その方法で穴掘りを続けてみよう。少しは進んだ、かな?

とった床の石を積み上げて踏み台にして天井に届くか確かめてみてもらえますか?

めくれた石畳は1枚だけだ。天井には届かない。

それなら、掘った土とか石を積み上げて、天井の窓まで手が届くようにしてください。無理とか言うな。

現状ある土と石畳を積んでみた。現状では高さが足りない。弱音は吐かずに少しずつ頑張るよ。

ドアの下を掘って食事を入れる隙間を広げてみたら、脱出できないでしょうか?

ドアの下も石畳が敷かれている。こちらはめくれそうにないな。

食事で渡されたものは何ですか?食べる前に教えてください

木の椀に入った飲み水、木の皿の上にビスケットとリンゴだな。

差し入れられたものを全部言ってください。

木の椀に入った飲み水、木の皿の上にビスケットとリンゴだな。そろそろ食べてもいいかな?

一枚だけめくれた石畳というのは、具体的には牢屋のどのあたりの石畳なんですか?窓の近くとか、壁際とか。

そうだな、天井の窓のちょうど真下あたりだ。

ギルベルトさん。あなたが入れる程度の穴を掘って岩で蓋をして隠れてみてはいかがですか?

食事がすんだら穴を掘ってみる。しかし俺が入れるぐらいの大きさの穴を掘るのは大変だ。今の俺に出来ることは時間をかけることだから、あきらめずに試してみよう。

一枚だけめくれた石畳というのがどれくらいの大きさなのか、だいたいでいいので教えていただけませんか?

俺の手のひらより少し大きいくらいかな。

リンゴを植えたら、木が生えてくるのでは?あなたなら、高く育つまで待つことが出来ますよね?

リンゴ?ああ、食事のリンゴか。(食べかけのリンゴから種を取り出し)この種を植えればいいんだな?植える場所と言えば……。

りんごの種はありますか?

(88より)今手元に。

石畳をめくって出てきた土にりんごの種を植えればいいのでは?土の場所は窓の下あたりだそうなので雨が吹き込むでしょうし、それで足りなければ食事の水をりんごに与えるというのは?

それはいい方法かもしれない。先ほど掘った穴にリンゴの種を植えた。掘った土を被せた。水もやった。

ギルベルトさん。さっき掘った穴にりんごの種をお植えなさい。

(90より)植えてみた。ここから芽が吹くかと思うと、何故か心が躍るな。

髪は切ったりせずに伸びたままですか?

適当なところまで伸びた段階で、無理矢理引きちぎっている。牢屋の外に出られず、外から人が入ってこない以上、これしかやりようがない。

90より 木が大きく育てば、それを上って窓まで行けるのでは?

そうか!植物の力を借りるんだな!よし、そういうことなら大切に育てるとしよう!

核心りんごの木が成長したら、ボロボロの鉄格子を壊して外に出れますね。とりあえず、ビスケットをポケットに入れて叩いたら増えるかもしれないのでやってみてください。

なるほど、そういうことか!リンゴを育てるのがますます楽しくなってきたぞ!ビスケットをポケットに入れて叩く……、確かに、増えたな。

さあ、待ちましょう。100年に比べたら木が育つまでの期間なんて短いものでしょう?

まさにその通りだ。年々木が育つのを見て、希望がわいてくるようだ!

僕らは不死身じゃないんで、気が育つまでに何世代か交代するかもしれませんが、地道に待ちましょう。

木を育てながら、木を育つのを待つとしよう!

久々に見る外界の景色はいかがですか?

……すまない。言葉が出ない。

脱出の感動をまずどなたに伝えたいですか?

陛下に。仲間に。家族に。もう誰もこの世にいないが……。

さぁ、第二の人生の始まりですね。これからはあんな狭い部屋に閉じ込められないように気を付けてください。あなたの不死身の体は誰かをきずつける為じゃなくて、誰かを守るためにあるのだから。(ドヤァ

君のその言葉が心に染みる。『呪われた』身体、無駄にはしないよ。君たちが貸してくれた知恵もね。

おめでとうございます (゚д゚)ゞ

ありがとう。君たちのおかげだ。

答え

※解説末尾に要約がありますので、時間のない方はそちらをご覧ください。


長い時をかけて牢屋からの脱出に成功した俺は、
祖国ハールへと向かった。

既に滅んでしまった、誰もいない祖国。

俺が勤めていた城は既にボロボロの廃墟だ。
城の周りの街も、何もかも、朽ち果てている。
無理もない。あの負け戦から、どれだけの時が過ぎたというのだろう。

足元には荒れた土。
手元にはカナン国から持ち出したリンゴの種。
いつの間にか降ってきた雨が、俺の全身を濡らす。

カナン国の牢屋での出来事を思い出す。

俺は目を閉じ、胸に手を当てる。
心音を感じる。決して止まない心音。

……俺は、一つの決心をした。
こんな形でしか亡き祖国に尽くせないが、
それでもこれは俺でなければ出来ないことなのだ。

例え何百年かかっても。



     ※



ハール国立大学。作物栽培学特別実習の授業中。
太陽の光が大学所有のリンゴ園に降り注ぎ、
そこにはまるで憩うかのように教授と学生たちがいる。

「実はこのリンゴには作物栽培学上の謎がある。
この品種はもともとハール市にはなく、
ここから遠く離れたカナン市の特産品であった。
しかし、ある時期よりハールでも盛んに栽培されるようになったのだ。
それ以来、このリンゴがハールの特産品として
豊かな富と恵みをもたらしていることは、諸君の知るところだろう」

教授が学問上の問題を学生たちに披露し始めた。

「カナンのリンゴというと、騎士がリンゴの木に変身したという、
あのリンゴですか?」

学生の一人が発言した。

「それは後世の人間が創作した逸話の類だろう。ともかく、そのリンゴだ。
さて、この品種がどのような過程でカナンからハールにもたらされたのか、
諸君には分かるかな?」

教授は微笑んで、学生たちに問いかけた。
学生たちは一様に首を傾げたり肩をすくめたりしている。

ただ一人、先ほど発言した学生だけは、リンゴの木をじっと見つめている。

「教授、おそらくその謎は解き明かせると思います」

リンゴの木を見たまま、その学生は言った。

「ボーデンシャッツ君、随分な自信だね。
学者たちは土壌の成分を調べたり、リンゴのDNAを調べたりしているが、
今のところ有力な説が出てきていない。
君はどうやってこの謎を解き明かすつもりかね?」

教授の質問に、ボーデンシャッツと呼ばれた学生は少し困ったように笑った。

「どうやって、かは、正直まだ分かりません。
でも、必ず解き明かしてみせます」

ボーデンシャッツは目を閉じ、胸に手を当てた。

「例え何百年かかっても」



解答要約:
不老不死の騎士が長年かけて牢屋の中でリンゴの木を育て、
その木によじ登って天井の窓から脱出する。



謝辞:
本問題作成にあたり、天童 魔子さん、さしゃさんに、
SPとしてご協力いただきました。ありがとうございます。

— ありがとう。君たちのおかげだ。

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