ウミガメのスープ

不在者の祝福

作者: とかげ

彼女の結婚式には、私だけ呼ばれなかった。
連絡すら来なかった。

当時親しかった人達は、皆呼ばれているのに。
一緒にいる間、彼女は他の誰よりも私に頼っていたのに。

それでも、私は彼女の結婚を心から祝福できた。

どういうことだろう?

出題者が、解き手の進み具合に応じて上から順に出すためのヒントです。

ヒントはまだありません。

過去の実際のやりとりです。質問されたら参考に答えてください。

いいえ

私はお婿さんですか?

NO 確かにそれは呼ばれないw

いいえ

私の性別は重要ですか?

NO 解説では女性です。

いいえ

私は結婚式に出席しましたか?

NO 無理やり押しかけません

いいえ

日現実要素はありますか?

NO 現実世界で起こりうる状況です

いいえ

私は遠い国にいましたか?

NO 遠くて行けなかったわけではありません

いいえ

問題文の"当時"の特定は必要ですか?

NO 数年前くらいだと思ってください。

はい

彼女は私のことを覚えていますか?

YES しっかり覚えています

いいえ

私は刑務所に収監されていますか?

NO 私は自由です

いいえ

私は新郎の元彼女ですか?

NO 私が男でも成り立ちます

いいえ

彼女は私を嫌っていますか?

NO むしろ感謝しているでしょう

いいえ

彼女は私が働いている式場で結婚式を挙げましたか?

NO 私は式場で働く人ではありません

いいえ

多重人格障害者は登場しますか?

NO 多重人格ではありません、が……

いいえ

私は彼女が小学生の頃の担任ですか?

NO ですが学校は関係します!

彼女は私を呼ぶこともできたのですか?

YESNO 不可能ではなかったはずですが……

はい

私と彼女に大きな年齢差はありますか?

YES 特定する必要はありませんが、年齢差はあります!

いいえ

部活の監督ですか?

NO 先生ではなく…

いいえ

部活の先輩ですか?

NO 先輩ではなく

いいえ

彼らは先輩後輩の関係ですか?

NO 結婚おめでとうございます

いいえ

え、給食のおばさんですか・・・?

NO ちなみに給食はありませんでした

いいえ

それとも、用務員のおじさんですか・・・?

NO 女性の用務員さんってそういえば見たことない…

いいえ

私は彼女の子供ですか?

NO 血縁関係はありません

いいえ

私は彼女が低学年の時に、学校の登下校を一緒にしていた上級生ですか?

NO 私は生徒ではありませんでした

いいえ

その学校は特別な学校ですか?

NO 一般的ですが、最近の学校を思い浮かべた方が良いかと

いいえ

登下校時に誘導しているおばさんですか?

NO あれってPTAの人なんですかね?

いいえ

私は犯罪者ですか?

NO まっとうな人間です

はい

私は人間ですか?

YES 彼女も人間です

はい

私は彼女が小学生時代の知り合いでも、中学生時代の知り合いでも成立しますか?

YES 解説では高校時代になっています

いいえ

家庭教師っすか?

NO 学校で出会いました

いいえ

「私」が講師を勤める場所の、教え子同士の結婚ですか?

NO それなら結婚式に呼んで欲しいw

はい

私は彼女の学校のカウンセラーでしたか?

YES! その通りです!

いいえ

求職活動のカウンセラーですか?

NO ちゃんと定職に就いているカウンセラーです!

はい

「私」を招待すると不都合な事がありましたか?

YES どう不都合なのでしょうか…?

はい

不登校のカウンセラーで、彼女が今では立ち直って、そのうえ結婚までするというのが嬉しくて、心から祝福できましたか?

YES その通りです!

いいえ

カウンセリングの研究で外界との接触を遮断し引きこもりの心情を味わっていたため連絡手段がありませんでした。

NOw カウンセラーは引きこもっていませんw …が、実は解説に少しかすっていたりいなかったり。

はい

私は、結婚式に招待されたなら出席できる状況にありましたか?

YES 状況的には可能ですが…

はい

核心私が出席すると、彼女が不登校児だったことが、みんなにバレるかもしれなかったですか?

YES 正解とします!

はい

核心玉の輿に乗れた「私」の暗い過去が来賓にあばかれてしまう可能性を懸念していますか?

YES 結婚おめでとうございます!

はい

核心格式高い家の男性と結婚するので、不登校だったことが知られるとまずいですか?

YES 皆さん仲良しですね!

いいえ

「私」は非常に身長が高く、結婚式場の入り口には這いつくばらないと侵入出来ませんか?

NOw そしたら外で結婚式をやりましょうw(ネタ良質)

はい

結婚だけにみなさんFA結婚してますね!おめっ!

YES 確かに! うまい!(ネタ良質)

答え

もう、死にたい。

絞り出すような呟きが、私が初めて聞いた彼女の声だった。

あら、そう。

無関心な相槌が、彼女が初めて聞いた私の声だった。


私は多分、良い人ではない。誰かを救いたいとか、力になりたいとか、そんな動機はなかった。
ただ、興味があったのだ。自分が全く感じたことのない気持ちを持った人間に。死にたいなど考えたこともない自分は、世の中ではむしろ異端なように感じられて。
だから、私は心理カウンセラーになった。
私の主な仕事は、いくつかの高校に出向き、定期的に高校生のカウンセリングを行うことだった。いわゆる、スクールカウンセラーだ。
彼らは実に多くの悩みを抱えている。死にたいと溢して何度もカウンセリングに来る人もいたし、一度話しただけですっきりして、二度と私の元へ訪れなかった人もいる。
友人、家族、恋愛、勉強、進路に部活……彼らの世界は大変狭かったけれど、その狭さゆえに闇も深かった。
こちらからすれば、何のことはない、そんなもの気にしなくていい、と思えることを、身体に不調が出るほど悩み込む人も少なくない。
それは私には理解できない感覚で、だからこそ興味深かった。

彼女もそんな一人だった。
自分の見た目が醜いと悩み、友達に嫌われていると悩み、家族からも邪険にされると悩み、何もできない無能な自分に悩んでいた。
そんなの気のせいだ、と周りからいくら言われても、そう言っておきながら、陰で自分を笑っているのだと、そんな自分自身の妄想に苦しめられていた。

彼女は半ば無理やり、私の元へ連れてこられた。担任の先生や両親が、カウンセリングに行くのがあなたのためだと説得したらしかった。
初めて来たときは、挨拶もせずに相談室に入ってきて、黙りこくったまま椅子に座り、私と目を合わさぬようじっと床を見つめていた。
だから私も何も言わず、机を挟んだ向かい側に座り、そのとき読んでいた本の続きをのんびり読み進めていた。
しばらくしてから、居たたまれなくなったのか、彼女の方から声を発した。

「もう、死にたい……」

消え入りそうな小さな声だったけれど、明るく染めた髪や塗りたくった化粧とは裏腹に、幼さの残る声色で、これが本来の彼女なのかと、私にはそれだけが強く印象に残った。

「あら、そう」

視線は本に注いだまま、相槌を打つ。
途端に、彼女が顔をあげたことを、目の端で捉えた。
呆けた顔をした彼女は、しばらくそのまま私を眺めて、そして。

「止めたり、理由を聞いたり、しないの?」
困惑しながら、質問をした。
よく聞かれる類の質問だから、いつものように簡潔に答える。
「止められたいなら、止める。理由を話したいなら、聞く。何も言いたくないなら、言わなくていい。ここはそういう場所だから」


彼女はすぐに常連客になった。
何も話さないときもあれば、1時間ほど喋り通していく日もある。
彼女の悩み一つ一つは、私の元へ来る他の高校生と大差なかった。けれど、そういう絵にかいたような典型的な悩みをたくさん抱える彼女は、私とは対極にいる存在で、尚更興味が持てた。
結局彼女の悩みは何一つ解決しなかった。
何一つ解決しないまま、騙し騙しなんとか高校には通い続け、出席日数ギリギリで卒業していった。

卒業した後も時々連絡があった。
相変わらずありがちな悩みを抱え、それを私に吐き出していた。
それでも少しずつ私に連絡をしてくることは減っていった。


彼女が卒業してから5年経ち、当時の教員達も半分ほど異動したその高校で、私はまだ仕事をしている。
彼女が結婚することを知ったのは、まだ高校に残っていた、当時彼女の担任だった教員からだ。
結婚相手は、優秀で家柄も良く、きちんとした人物なのだそうだ。
私も当然結婚式に呼ばれていると思っていたらしく、呼ばれてないどころか初耳であることを告げると、バツが悪そうな表情で曖昧に話題を濁して去って行った。


彼女が結婚か。
きっと彼女は、前に進めたのだろう。
私に声をかけないことが、何よりの証拠だ。

なぜなら私は……彼女の過去の、象徴なのだから。

彼女が死にたいと思うほどの悩みを抱えなければ、私と出会うことはなかった。だからこそ、私という存在自体が、彼女の中では、過去の自分を表してしまう。
そして残念ながら、人によっては、カウンセリングを受けること自体に抵抗があって、カウンセリングを受けなくてはいけなかった彼女に偏見を持つ。彼女はそういった過去のことを、結婚相手に伝えていない可能性も高い。結婚相手自身はそういったこともひっくるめて理解してくれるかもしれないが、家柄が良いのであれば結婚相手の親族は嫌がるだろう。
もし呼ばれたとしても、私は彼女の結婚式に出るつもりなど毛頭ない。私は行かない方がいいのだ。

これが、私の仕事だ。

あなたの闇は私が持って行ってあげるから、私とともに忘れなさい。
そして、普通の幸せを手に入れなさい。

END

私は心理カウンセラー。彼女は高校生のとき、私のカウンセリングを受けていた。私の存在自体が過去の嫌な記憶を思い出させること、カウンセリングを受けていた事実は偏見を持たれかねないことから、結婚式には呼べなかった。私はそのことを理解しているので、「呼ばれない=過去との決別」と読み取り、遠くから祝福をするのだった。

— スープ入刀

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